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ロレックス オーバーホール 修理 専門工房(有)友輝 全国47都道府県配送対応

格安・激安業者で見積もりしたら実際は・・

  • 件数としては非常に少ないものの、メール/問い合わせフォームの段階で、いくつかの交換部品が明示されていて「これらの部品を全て交換して御社でオーバーホールを行った場合、見積り額はいくらになりますか?」というお問い合わせをいただく事がございます。

    この問い合わせパターンの場合、大体話の流れと言いますか、どういったきっかけがあって当社へ問い合わせをされたのかが分かります。

    問い合わせ内容の特徴としては、以下の点があげられます。

    1.マニアと自称する時計好きの方でも、ほとんど知らない内部部品の名称が具体的に記載されている。

    2.メール/問い合わせフォームで当社にお問い合わせいただく場合、現在ほとんどの方が時計の画像を添付してくださるのですが、画像の添付が無い。

    こういった問い合わせに対して、当社がどのように対応していったのかを、以下に詳しく述べてゆきますが、おそらく時計修理の業界に根強く存在する問題点について、深く踏み込んだ内容となっております。

    こういった場合、「他社へ見積もりを依頼したが、予想外の高額を提示されたので一旦進行を保留した」というパターンがほとんどです。

    画像が無いのは、実際に時計を預けているので時計を撮影できないのでしょう。
    内部部品の名称が具体的に記載されているのは、見積もりの際に交換部品として提示されているからと思われます。

    先のような問い合わせがあった場合、当社では以下のようにお伝えしております。
  • ○○様

    お問い合わせありがとうございます。
    あくまで推測ですが、現在、メーカー/正規代理店以外へお見積もり依頼をされておりますでしょうか?

    もしそうでしたら、これまでの経験から、メーカー/正規代理店以外の同業他社様でのお見積りは、当社の基準では交換不要と思われる部品が加算されている事も多いので、それを元にした見積はしていない事をご了承ください。

    問い合わせフォームの内容を出来る限り詳しくご記入いただき、角度を変えた時計の画像を複数枚お送りください。

    折り返し画像と内容から状態を判断しまして、あくまで当社の基準の範囲内となりますが、詳細な概算見積をお知らせいたします。
    よろしくお願い致します。
  • 以上のメールをお送りしたことで、前の見積もり先をキャンセルされて時計を引き上げてきたのでしょうか、間もなくしてこの画像とともに、概算見積もりに必要な情報が送られてきました。

    ロレックス オーバーホール

    ●購入年月日:1998/12
    ●これまでの修理歴:修理・オーバーホール履歴無し
    ●現在の異常など:これまで特に動作に問題は無かったが、突然停止してしまった。
     時計を振ると秒針が数秒逆回転して停止する。

    情報は以上だけ、画像はこの1枚でかなり正確な概算見積もりが可能でしたので、予想される合計金額として¥36,750〜¥39,900を提示いたしました。

    この情報だけで見積もりをするノウハウについては、ここでは字数の都合もあり、企業秘密とさせていただきますが、現物を拝見後に実際の合計金額を上回る事は、全体の3%以下です。

    ロレックス 修理

    早速裏蓋を開封して点検しましたが、ご購入から15年経過している事を考慮すると、大変状態は良好で、オイルの固着や歯車軸のわずかな摩耗はあるものの、当社でも比較的安価な見積もりとなりました。

    正式見積りは以下の通りです。

    オーバーホール(分解・超音波洗浄・組立・注油)¥26,250 
    ゼンマイ交換 ¥3,675
    2,4番歯車芯研磨 ¥4,200
    合計 ¥34,125(価格は完了時のものです)

    直接の停止の原因はゼンマイ切れでしたが、もしゼンマイが切れていなければ、そのまま使用し続けていたものと思われます。

    ロレックスのような高精度の部品が使用された時計は、部品が摩耗変形しつつも、停止する直前まで、かなり正確な時刻を示すので、そのまま使用し続けてしまう人が後を絶たないのです。

    その結果、大幅な進み遅れや、翌朝までに停止しているといった動作維持時間の短縮などといった自覚症状が出てからのオーバーホールですと、交換部品が多くなり、結果として高額の修理となる事が少なくありません。

    この価格で済んだのは、ゼンマイが切れた事で、その後の使用を止めるきっかけとなったからです。

    ¥34,125という見積もり金額をお伝えすると、すぐに正式なご依頼(進行)の連絡がありました。
    早速作業に取り掛かりましたが、完全分解してもサビや予想外の部品の破損なども無く、実にスムーズにオーバーホールが終了し、1か月後に何の問題も無くお客様へ返送する事が出来ました。

    到着後しばらくして、ご依頼者の方からメールをいただきました。
    そこには一連の当社の対応へのお礼が記されておりましたが、同時に“御社の前に他社で出してもらった見積りを添付します。ご参考までに”との事で、同じ時計での他社の見積もりが添付されておりました。

    同じ時計で、見積もりを比較する機会はめったにありません。
    さて、その内容とはいかに!?

    他社での見積もりの内訳は以下の通りです。

    オーバーホール ¥1〇,850(価格は消費税5%込)
    サビ取り ¥5,250
    テンプ調整 ¥5,250
    ゼンマイ ¥4,200
    2番歯車 ¥7,350
    4番歯車 ¥○,○○○
    ツツミ車 ¥7,350
    ガラスパッキン ¥2,100
    パッキン ¥1,050
    ツバ付きバネ棒×2 ¥2,100
    合計 ¥59,850

    オーバーホール基本料金と4番歯車の価格を伏せ字にしたのには理由があります。

    「ロレックス オーバーホール」などの用語で検索すれば、ロレックスのオーバーホールを請け負う会社の比較サイトなどが出てきますので、容易に各社のオーバーホール基本料金の比較が可能です。

    そのため、オーバーホール基本料金が格安であるなど、料金体系に特徴があると、すぐにこの会社の特定が可能だからです。
    それでも、鋭い方なら上記の情報でかなりの確度での推測が可能かもしれません。

    この他社での見積もりと、当社の実際例を比較してみましょう。

    まず¥2,100のガラスパッキンですが、当社の場合は目視による点検で状態良好で、防水気密試験に合格した場合は交換しない事も多いです。
    このロレックスの場合は交換不要と判断いたしました。

    ¥1,050の裏蓋、リューズ部のパッキン交換は、当社では基本オーバーホール料金に含まれております。

    バネ棒も点検の結果、サビ、固着は無いので、4~5年後の次回オーバーホールまでは交換不要と判断いたしました。
    2番、4番歯車には酸化して変質したオイルが軸に固着していたものの、旋盤による研摩作業で除去可能でした。

    この作業に使用する旋盤(画像参照)は大変高価です。
    他社では旋盤を所有していないために固着が除去できず、歯車交換という見積もりになったのかもしれません。

    ロレックス修理旋盤

    ツヅミ車に関しては、顕微鏡を使用した点検でも、交換または加工が必要と思われるほどの変形や劣化はありませんでした。

    ゼンマイ交換は当社では¥3,675です。

    交換する部品の価格については、仕入れ先が違うという事もあるでしょうし、部品交換を行う判断基準は会社(作業者)によっても異なりますので、一概に“交換不要な部品まで上乗せしている”とは決め付けられません。

    逆に他社では見積もりに加えられなかった部品でも、保証期間を過ぎてからの長いスパンまで考慮し、当社では交換必須と見積もる場合もございます。

    他社での見積書には、備考として“※湿気(大)、 ショックによるヒゲ曲り可能性大”と記してありました。

    湿気については、完全分解(オーバーホール)前の見積もりの段階で、当社では「湿気混入の形跡は無い」と」判断して最終的な見積もり金額を確定いたしました。

    過去に湿気が混入していると、表面のメッキに腐食/変色が発生していたり、オイルの急激な変質や蒸発を引き起こしていることが多いのです。

    こういった状態であった場合、目視出来ない箇所にサビが発生していることがありますので、サビ除去・防錆加工といった追加項目を見積もりに加えます。

    裏蓋を開封したところ、内部は画像のように非常に綺麗な状態でした。
    この状態であれば、まずサビの発生は無いと判断いたします。

    ロレックス ムーブメント

    裏蓋を開封した段階では、文字盤の裏側にある部品に発生したサビを確認することは不可能なのですが、文字盤裏に湿気が混入していると、文字盤や針のメッキ・塗装の変色や剥離を引き起こす事が多いので、それが無い場合は、文字盤の裏側にサビは発生していないと推測しています。

    お客様から、問い合わせフォームの段階で画像を添付していただいておりましたので、概算見積もりの段階で、おそらくサビの発生は無いだろうと推測していましたが、完全分解後もサビは一切確認出来ませんでした。

    私もかねがね「時計修理において最も難しい作業は見積もりである」と申しておりますので、裏蓋を開封しただけの段階で、正確な見積もりを出すことがいかに困難かは理解しておりますが、“湿気(大)”の判断はどのような基準で行ったのかを知りたいところです。

    見積書には、さらに備考として“ショックによるヒゲ曲り可能性大”と記してあり、ヒゲゼンマイ修正作業工賃¥5,250が計上されておりました。

    ヒゲゼンマイの曲り、変形は裏蓋を開封すれば目視で簡単に確認できます。
    “可能性大”という事は、裏蓋を開封していないのでは??

    そう思わざるを得ない判断です。

    当社で裏蓋を開封した段階で、このロレックスRef.15200においてはヒゲゼンマイの変形・曲りは皆無でした。
    キャンセルになったにもかかわらず、サービスでヒゲゼンマイの修正を行ったのでしょうか?
    ちなみに、消去法による不調原因の特定をより確実に行うため、私は見積もり段階で修正してしまう事が多いのですが。

    ヒゲゼンマイの修正は、当社では画像のように変形していても、オーバーホールに含まれる基本作業として実施し、追加料金として加算しておりません。(ねじりによる変形は別です)

    以下のページに実際の作業例が記載されております。
    →解説ページへ

    結局、最初の見積りどおりの¥34,125が最終的な請求額となりました。

    ロレックスRef.15200

    かなりの確証をもって予想は出来ておりましたが、見積り後当社で完全分解しても、状態は非常に良好でしたので、追加の交換部品や加工も発生せず、何ら不安が無い状態に回復させることが出来ました。

    お引渡し後2年が経過しましたが、再点検の依頼などはありませんので、順調に動作し、正確な時を刻んでいる事でしょう。

    最初の業者さんの見積もりは、たとえ当社では加算されない部品代、工賃が多く計上されていたとしても、何らかの当社とは異なる視点による判断基準があっての見積もりなのだと思います。

    実際に作業を行って状態が良好であれば、不要となった部品代や加工工賃は最終的に請求しない、という方針であれば何ら問題は無いのですが・・

    ただし、この業者さんに見積り依頼→キャンセル→当社でより安価にオーバーホール、という顛末を迎えた事例はこの1件だけでなく、全く同じパターンが年に数例ある事だけは申し上げておきます。

    最初に見積もった業者さんが、安価なオーバーホール基本料金で目を引き付け、来店または現物を配送した後は、お客様の心理としてキャンセルしにくい状況を逆手に取り、不必要な部品代や工賃を上乗せする、という悪しき習慣が当たり前という経営姿勢では無い事を、同業者として切に祈ります。