定期オーバーホールの重要性

ロレックス | by admin
7月 27 2017 年

ロレックス・デイトジャストを4年前にオーバーホールされたお客様から「全く異常は無いけど今回もお願いします」と大変喜ばしいご依頼をいただきました。

夏場のご使用にも留意されていたせいか、湿気の混入によるオイル蒸発/変質は最小限で済んでいました。

画像中心の赤い人工ルビーの内側40%程度に丸い淵が確認できますが、これがオイルの残量です。(ちなみにルビーの直径は1.4mm位です)

オーバホール直後よりも若干径が小さくなっておりますので、30%程度はオイルが蒸発しているのが分かります。となると、あと5~6年はオイル残量が保たれるのでオーバーホールをその分先延ばししても大丈夫じゃないの??と考えがちですが、決してそんな事はありません。

4年経過したオイルを注油棒で突いてみると、若干粘度が変化しており、油膜保持機能が低下し始めている事がわかります。
この感じですと、数年後には部品を摩耗させながら動作し続ける可能性があります。

画像は先端を0.1mm以下に研いだ注油棒でルビー軸受に注油しているところです。

毛細管現象によってオイルが綺麗な真円に拡がっていないと、油膜は5年間保持できません。

Ref.16800サブマリーナ

ロレックス | by admin
3月 28 2017 年

日本ロレックス/公認技術店以外でオーバーホールされた履歴のあるRef.16800サブマリーナですが、ほぼ全てのネジ溝が歪み(=俗にネジが笑う、といいます)美しく装飾された表面にはいたるところに無数の傷がついています。

ピンセットやドライバー等の工具の状態だけでなく、作業者の技術そのものがお金をいただくレベルに達していない、もしくは衰えてしまった結果です。

内部が傷だらけだったロレックス・サブマリーナですが、外装の方もなかなかの状態です。
ベゼル逆回転防止用のクリックスプリングが通常のスチールで自作されていたためにサビが発生しており、折れる寸前でした。

さらに先端が整形されておらず、これでは回転ベゼル内側の山を削ってしまいます。
機能上影響はない点ですが、スプリングのセット位置と方向が工場出荷時とは全く違う位置にあります。
また、スプリングの元の形状やベゼルのセット方法を的確に把握しておらず何度も試行錯誤を繰り返したせいか、ガラス取付枠に無数の傷がついております。

こういう作業者に扱われた時計は徹底的に疑う必要があります。
文字盤には湿気による塗装変質が見受けられたので、ガラス固定枠を外してみたら案の定、防水/防湿用のパッキンが入っていませんでした・・
※下画像がパッキンの入った状態です。

過去の不適切な作業の際にパッキンを入れ忘れられ、空気中の湿気が侵入した結果、秒針のメッキやカレンダー枠周辺の塗装はこのように劣化しておりました。
こういったNG作業は往々にして時間が経過してから悪影響を及ぼすことが多いため非常に厄介です。

パッキンの入れ忘れは致命的なミスですが、防水テストを行っていればかなりの確度でミスを発見する事が可能です。防水検査が不合格となった場合は各種パッキンやリューズ等、不良個所を特定する事が必要です。

画像のような水圧式の防水検査機を所有している工房は多いのですが、検査過程が非常に面倒なため、修理品全ての防水検査を行わない所もあるようです。

防水検査を行っていれば、本体ケース/裏蓋にサビや変形が無いにもかかわらず検査不合格となった時点で、パッキンの劣化や入れ忘れを疑ってミスを発見する事が可能です。

高圧空気を使用する防水/気密検査機があれば、防水テストが容易に行えます。
ただ非常に高価な機器のため、個人経営や小規模な時計修理店には導入されていない事も多いようです。

こういった専用機器があれば”万が一”のパッキン入れ忘れを発見する事が可能です。

これが防水検査を省略したオーバーホールの結果です。
このデイトナはリューズチューブ部から湿気が混入してオイルを蒸発/変質させた状態で使用し続けたため、サビや部品の摩耗が発生しておりました。
前回のオーバーホールからわずか2年強だそうです。
適切な検査機で防水テストを行っていれば、このような事態は防げた可能性が高いのです。
当社の修理のうち、最も苦労するのが過去に適切でないオーバーホール作業を施された場合です。
ロレックスに適した防水検査機と自動洗浄機は大変高価です。

オメガ シーマスター300

オメガ | by admin
3月 13 2017 年

こんなレア物をオーバーホールしました。

ご依頼者様のお父上が50年以上前に欧州で購入したワンオーナーものだそうです。
かなりハードに使い込んだせいか、ベゼルのプリントは全て剥離してしまったようですがコンディションは悪くありません。
防水性の回復は不可能でしたが、湿気/水気を避ける事に留意すれば、まだまだ時計として現役です。

ロレックス 修理 ネジ

ロレックス | by admin
10月 20 2016 年

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当社で作業する時計で使用されているうちで、最もネジ径の細いものはこのサイズ。
もちろん目盛の間隔は1mmです
こんなので締め込み過ぎてネジを折られたら、ほぼ抜き取り不可能です・・

ロレックス オーバーホール

ロレックス | by admin
10月 20 2016 年

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実は大変厄介なのが、ネジの締め付けトルクが過大過ぎる場合です。
このようにネジの頭部が折れ、駆動部に挟まって停止の原因となりますが、実はさらに重大な問題を引き起こします
「ネジは固く締めるほど緩まなくていい」と盲信している作業者が大変多いのに驚かされます。

オメガ スピードマスター オーバーホール2.

オメガ | by admin
10月 20 2016 年

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当社ではお引渡しの際に交換した部品をこのようにお見せし、ご希望の場合はお持ち帰りいただいております。
これは”確実に部品交換しました”という証でもあります
興味深いのは、オメガの場合は「御社で処分しちゃってください」と仰るお客様が多いのですが、ロレックスの場合は殆どの方がお持ち帰りになる事でしょうか。

オメガ スピードマスター Pro.

オメガ | by admin
10月 20 2016 年

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手巻きの際にガタつく感触がするというスピードマスターですが、内部機械を固定するネジが緩んで上部に飛び出していました。
反対側の固定ネジも同じように緩んでいましたので、恐らく締め付けトルク不足でしょう。
ネジ頭の直径+厚さとネジ部の直径および長さから、ほぼ適正な締め付けトルクの推測が可能です。
また、工場出荷されてから人の手が入ってないネジを緩めると、その感触でおおよその締め付けトルクを体感/会得する事が出来ます。

オメガ スピードマスター オーバーホール1.

オメガ | by admin
10月 20 2016 年

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昨年「手巻きの際に内部でガタつくような感触がする」
という症状でご依頼されたスピードマスターPro.です
裏蓋内側のサインから、メーカー/正規代理店でないところで、おそらく平成24年12月にオーバーホールしてから2年未満でこのような症状となった事がわかります。

オメガ スピードマスター 文字盤

オメガ | by admin
10月 20 2016 年

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浸水したスピードマスターの文字盤です。
表面の水滴を乾燥させてもシミのような痕が残り、決して元の状態には戻りません。

オメガ スピードマスター プロフェッショナル

オメガ | by admin
10月 20 2016 年

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塩素成分がステンレスを腐食させる事はさほど無いようなのですが、この場合、日常的にシャワーの水流にさらされる事には注意が必要です。
「防水機能が完全」ならば問題無いのですが、パッキンが劣化していたり、リューズの緩みに気づかないでいると、容易に水分が内部に侵入します。
その結果、決して新品状態には戻らなくなった時計を数多く見てきました。
防水機能はあくまで万一の際の保険と考え、必要性の無い限り湿気/水気は避けたほうが無難です。