Archive for 2011 年 8 月

三種の神器(?)

工具/設備機器 | by admin
8月 20 2011 年

私がヒゲゼンマイ修正に使用するピンセット3種です。

売っている状態ほぼそのままのものは、一番下のものだけで、後の2本は、隙間の狭いヒゲゼンマイ(主にヴィンテージ女性用)に使用するために先端を極めて細く削ったり、顕微鏡での作業で視野を確保するために、曲げ加工を施しています。

また、この3本は先端の形状だけでなく、閉じる際に要する力(いわゆる”コシ”)も大きく異なっており作業の内容や、ヒゲゼンマイの弾性によって使い分けます。

回復処置

時計業界に物申す | by admin
8月 19 2011 年

 

すっかり尻切れトンボになってしまった”香箱キズ”の記事ですが、
「回復処置編」忘れずに書きますよ。

まず、深いキズを根本的に取り去るのは難しいということをご理解ください。

それにはキズが無くなるまで表面を研磨し、仕上げ模様を施すことになりますが、
研磨=肉厚が薄くなることであり、あまり好ましい処置でないことと、ロレックスの
香箱のような仕上げ模様は、旋盤に大変高価なアタッチメントを取り付けて行う必要が
あり、容易に行うことが出来ないのです。

そこで、リューターにワイヤーブラシを取り付け、仕上げ目に沿って、”ごく軽く”
当てるようにして、”キズを目立たなく”するようにします。

1枚目と3枚目の画像が”ワイヤーブラシ使用前・使用後”になりますが、若干の違いが
お分かりになりますでしょうか?
あくまで若干、ですよ・・・

画像のように、力加減と当てる方向がわかっていれば、かなり使い込んだスチールブラシ
が最適ですが、慣れないうちは真鍮製のワイヤーブラシを使用するのが賢明でしょう。

さて、この度技術志向で無い方々にも喜んでもらえそうなネタ(修理品)が入って
きました。
週一ペースがやっとになりそうですが、私にとっても興味深い時計ですので、内容の
濃い記事になりそうです。
ご期待ください!

判りやすく捻ってみました

ロレックス | by admin
8月 19 2011 年

 

ヒゲゼンマイの断面は円形ではなく薄い板状のバネになっていて、それを
コイルにして巻いてあります。

顕微鏡を駆使しても、ヒゲゼンマイを修正している瞬間は捉えきれないので、
”ねじる”という修正方法を、細長く切った紙テープで再現してみました。

判りやすく見せるために、かなり極端にねじってみましたが、方法としては、
ほとんどこの”まんま”です。

修正済

ロレックス | by admin
8月 19 2011 年

無事修正できました♪

でも、このcal.2135を含む現行ロレックスは、この後テンプの
組み込みに難所が待ち受けてるんですよ・・・

ロレックス独特の設計で、高精度を達成するためには不可欠な
構造なのですが、一度テンプを取り外すと面倒な事になるんです。

このあたりの解説は、また回をあらためて!

いよいよ修正

ロレックス | by admin
8月 19 2011 年

 

本のヒゲゼンマイ専用ピンセットを左右それぞれの手で持ち、赤丸と×印部分を
挟みます。

そのまま、右手のピンセットだけ赤丸部分を支点として、矢印方向(内側)へ捻ります。

このように、2本のピンセットを使用すると、ヒゲゼンマイを”捻る”ことが可能に
なります。

逆説的な見方をすると、正常な状態から”捻って変形させてしまう”恐れもあるのです。

これが、水平方向での変形の場合、私が2本のピンセットで修正する事を避ける理由でも
あります。

次回、”修正後”の画像を掲載します。

国会じゃありませんが、”捩れ”てます

ロレックス | by admin
8月 19 2011 年

手持ちの顕微鏡での最大倍率(40倍)で撮影した、変形部分の拡大画像です。

よく見ると、外側に”ねじれて”変形しているのがお分かりになりますでしょうか?
(クリックでさらに倍率upしてください)

50~60年前のブローバ時計学校のテキストや、スイス/フランスの技術解説書籍でも、
修正を要するヒゲゼンマイの実例として紹介されているのは、”くの字状”=水平方向
に変形した場合の修正方法ばかりです。

しかし、実際にはこのように捩れて変形する場合も多いのが実情です。

次回、どこをどうやって修正するのか、静止画像と文章だけで何とか判りやすく
解説する方法を考えあぐねているところでございます。

しばしお待ち下さい…

修正ポイント2

ロレックス | by admin
8月 19 2011 年

前の画像で、この部分からヒゲゼンマイが外側方向へ変形してしまっているのが確認できましたね。

ヒゲゼンマイが水平方向で変形している場合、○の部分をヒゲ専用ピンセットを使って左手でつまみ、(勿論、強くつまむとそこでさらに変形しますよ!)右手に持った極細ピンで、×印をつけた部分のヒゲゼンマイ外側側面を、矢印方向へ押してやります。

右手もヒゲ専用ピンセットでつまむという方法もありますが、微妙な力加減が難しく、曲げすぎてしまうこともあるので、私はヒゲゼンマイの弾性を利用しながら、ピンで押しつつ、徐々に元の形に修正するやり方を採っています。

が、しかし・・・

この画像の事例の場合、上記のような一般的な水平方向変形に対応する修正をしてしまうと、変形度合がさらに大きくなり、「ヒゲゼンマイ・スパイラル」に陥る原因となります。

次回、正解の修正方法の解説です。

修正ポイント発表

ロレックス | by admin
8月 19 2011 年

正解は、赤マルで囲んだ部分です。

ここでヒゲゼンマイの自然なカーブが乱れ、その先からは同心円の形状が崩れているのがお分かりになりますでしょうか?

落下の衝撃などの場合、修正が必要なポイントは一箇所である場合がほとんどです。
(複数箇所になるのは、ピンセットやドライバーで触れてしまったり、という修理者のミスによる場合が多い)

形状が変化してしまった箇所を見誤り、間違ったポイントでヒゲゼンマイを曲げたりすると、形状変化がますます大きくなり修正ポイントの見極めが
より一層困難になる、という文字通りの”ヒゲゼンマイ・スパイラル”(洒落です・・私が勝手に命名しました)に陥ります。

次回は具体的な修正の方法について書こうと思います。

ヒゲゼンマイ修正

ロレックス | by admin
8月 19 2011 年

現行より一世代前のロレックス・レディースとボーイズに搭載されている、
cal.2135のテンプです。

「落下させたら停止してしまった」とのことで持ち込まれたので、
早速その場で裏蓋を開封して点検いたしました。

幸い天芯は無事だったのですが、衝撃でヒゲ持ちとヒゲゼンマイが接触し、
ヒゲゼンマイが変形したことにより停止していました。

画像はヒゲゼンマイ部分を拡大したものですが、どこが変形していて修正の
必要な箇所かわかりますでしょうか?

ちなみに、蚊取り線香のように渦巻き状になっているヒゲゼンマイの直径は、
このcal.2135では、約4mm弱です。

赤サブの出自

ロレックス | by admin
8月 19 2011 年

お客様がこのサブマリーナをオーバーホールのために持ち込まれた際、私が
「赤サブですね。結構なお値段で買われたのではないですか?」
と訊ねたところ、
「あ、父が30年以上前に商用で渡欧した際に購入してきたもので、私はあまり詳しくわからないんです。父が亡くなったので、自分で使おうかと思いまして」
とのことでした。

伝え聞く限りでは、販売されてからの履歴がこれほど確実な赤サブもないでしょう。

”赤サブ”なる、時計本来の価値(品質)に伴わない希少価値によるプレミアなどが
存在しなかった時代に購入し、そのままワンオーナーのもと、定期的に正規代理店であるリーベルマン商会~日本ロレックスにおいてメンテナンスされてきたという点で、紹介に値する時計であると思い、ここでとり上げてみました。

全面的なリダンはせず、オリジナルのロゴの上に赤色のロゴを載せてプリントする方法、
(普通のRef.1680を赤サブに換える方法)私は知ってますよ。

これがどういうことを意味するかは、皆さんのご想像にお任せします。